· 

8ナンバーへの変更は面倒?

キッチンカー 8ナンバー 行政書士長尾真由子事務所

前回の記事「キッチンカーは8ナンバーにすべき?」で、キッチンカーを開業するのであれば構造変更検査を受けて8ナンバーにするべきである旨をお伝えしました。

 

では、8ナンバーにしたいと思った場合、具体的にはキッチンカーをどのような仕様に変更して、どこに持っていけばよいのでしょうか?

 

そして、それは面倒な手続きなのでしょうか?

 

今回は、キッチンカーの構造変更の要件と準備するべき書類、構造変更検査を受ける場所について解説していきたいと思います。

|8ナンバーキッチンカーの条件

特定の法律上の資格、行為等に必要とされる条件のことを要件といいます。4ナンバー(主に軽トラック)や1ナンバー(普通車のトラック)を8ナンバーに変更するには国土交通省の依命通達(いめいつうたつ)である「自動車等の用途等の区分について」の構造要件に適合したキッチンカーにする必要があります。

 

上記の依命通達とは、国土交通省が自動車検査、登録に関する事項を指示する文書です。

 

国土交通省|特種用途自動車(8ナンバー)の構造要件

自動車の用途等の区分について(依命通達)参照

自動車検査・登録ガイド (mlit.go.jp)

 

注意したいのは、保健所で取得する「営業許可」の条件(要件)とは異なることです。

ここでは、「営業許可」にはあまり触れず、「構造要件」に重点を置いて説明します。

 

 まず、上の依命通達の中で区分されている用途では、キッチンカーは特種用途自動車特殊な目的に専ら使用するための自動車になります。

 

特種自動車は細かく分類されていて(コンクリートミキサー車や車いす移動者、キャンピング車など)、どの区分の自動車にしたいかにより要件も異なってきます。キッチンカーは加工車として登録するのが一番理にかなっているでしょう。似たような区分に食堂車がありますが、キッチンカーの用途とは少しずれています。車内でお客様が食事をする設備が必要となってくるからです。

また、食堂車はさらに条件が厳しくなります(食事用のテーブル、椅子の設置や乗降口の条件など)ので、わざわざ食堂車として登録をするメリットはないでしょう。(車の中でお客様に食事をしていただく場合は食堂車を登録してください。)

 

 加工車とは食料品の原料や素材の加工作業を行うために使用する自動車のことです。

 

キッチンカーを加工車として登録する

キッチンカーを、「自動車の用途区分について(依命通達)」、「4 特種用途自動車」の中の「4-1-3特種な目的に専ら使用するための自動車」の加工車として登録したい場合は、以下の条件に適合する車を用意します。

 

 

1.食料品の原料や素材の加工作業を行うために使用する自動車であること。

 

加工車として登録するのであれば大前提ですね。ここは特に説明の必要もないでしょう。


 2.加工作業に必要な加工台、流し台、加工するための用具を収納する棚などを車内に設置し、かつこれらの設備は車内使用できること。

 

ここは食品営業許可の条件をクリアーしていれば問題ありませんね。車内と書かれていますが、、荷物としてこれらの設備を載せて運び、車の外で使用するのであれば、わざわざ8ナンバーにする必要はありません。ただ、このような形態の車をキッチンカーというのかどうかは疑問です。

 

 

3.加工作業を行う場所に、照明器具や換気装置(換気扇)を設置すること。

 

照明器具は電気配線を敷いて天井や壁に照明器具を取り付けなければいけません。

換気装置も、営業許可要件とは異なり、窓ではなく換気扇にする必要があります。

これらの設備も構造変更検査を受ける前にきちんと取り付けを済ませて、動作確認もしておきましょう。

 

 

 4.火気等熱量を発生する場所の付近は、発生した熱量で火災が生じないような十分な耐熱性、耐火性が必要で、その付近に換気装置(換気扇)を備え必要な換気ができること。

 

販売商品にもよりますが、火を使用することの多いキッチンカーは、火災の危険性と隣り合わせです。内装には熱や火に強い素材を選びましょう。また、構造要件にはありませんが、水は必ず使用しますので、耐水性も必要になってきます。

換気装置(換気扇)は3と重複しますが、国土交通省の依命通達には分けて書かれています。換気装置の場所はどこでも良いのではなく、火を取り扱う場所の近くに取り付けなくてはならないということです。

 

 

5.2の設備の付近には一辺が30㎝の正方形を含む0.5㎡以上の加工作業用の床面積が必要、かつ当該床面から上方1600㎜(1の設備の端部と乗降口との車両中心線方向の最遠距離が2m未満である場合は、1200㎜)以上が確保されていること。

 

下の図は床面のイメージ図です。単位はmmになります。

あくまでイメージですので、この通りの床面にする必要はありません。

床面は0.5㎡以上あれば、900×600でも、800×700でも、長方形や正方形でなく、いびつな形でもかまいません。

6.物品積載設備がないこと。

 

特殊な設備を設置した場合の面積が1㎡(軽自動車にあっては、0.6㎡)以上であること。キッチンの設備の面積が、キッチン部分の床面積の2分の1を超えること。

 

つまり、「加工車に改造したのだから、荷物を積むところがあってはおかしい」ということです。

 

また、床面積の2分の1以上の設備を搭載している必要があります。この条件は保健所の営業許可では問われませんので注意が必要です。保健所の許可が下りたからといって、構造変更検査に合格するとは限りません。

 

 

国土交通省 自動車検査・登録ガイド 

構造要件 参照

 

kubun-3-3-72.pdf (mlit.go.jp)

 

 

|構造変更検査に必要な書類

 
  1. 1.申請書
  2. 2.自動車検査証
  3. 3.自動車検査票
  4. 4.点検整備記録簿
  5. 5.自動車損害賠償責任保険(共済)証明書
  6. 6.使用者の委任状
  7. 7.所有者の委任状
  8. 8.手数料納付書
  9. 9.自動車重量税納付書  
  10. 10.納税証明書
    •    

以上はの内容は国土交通省のホームページに書かれています。

 

構造等変更の手続|自動車検査登録総合ポータルサイト|国土交通省 (mlit.go.jp)

申請書類については、こちらの記事で詳しく説明しています。

|構造変更検査を受ける場所

構造変更検査は独立行政法人自動車技術総合機構(NALTEC)が行っています。自動車技術総合機構は全国に事務所があり、大阪府内ですと、近畿検査部(寝屋川市)、なにわ事務所(大阪市)、和泉事務所(和泉市)の3つの事務所があります。

ナンバーによって管轄がありますので、まずは管轄の事務所に相談に行きましょう。

 

 |大阪ナンバー → 近畿検査部 072-812-1818

大阪ナンバー管轄地域

茨木市、高槻市、吹田市、寝屋川市、四條畷市、摂津市、守口市、豊中市、門真市、東大阪市、枚方市、大東市、交野市、池田市、八尾市、箕面市、三島郡、豊能郡

|なにわナンバー → なにわ事務所(06-6612-8060)

なにわナンバー管轄地域

大阪市

和泉ナンバー・堺ナンバー → 和泉事務所(0725-46-6969

和泉ナンバー管轄地域

岸和田市、泉大津市、貝塚市、泉佐野市、富田林市、河内長野市、松原市、和泉市、柏原市、羽曳野市、高石市、藤井寺市、泉南市、大阪狭山市、阪南市、南河内郡、泉北郡、泉南郡

堺ナンバー管轄地域

堺市

相談に行く際には図面車検証を持参すると良いでしょう。図面は手書きで構いませんので、床の面積とどのような設備を載せているのかが分かるものを用意しましょう。

 

また、近畿検査部さんにお問い合わせをしたところ、相談の際には予約は必要ないということでしたが、検査官は昼間は検査の方に出ていて対応できないので、16:00~17:00の間に来て欲しいとのことでした。

 

他の事務所はまた対応が違うかもしれませんので、大阪ナンバー以外の大阪の自動車をお持ちの方は、管轄の事務所にお問い合わせ下さい。

 

|まとめ

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

 

4ナンバー、1ナンバーの車をキッチンカーとして8ナンバーに変更するには、以下の要件と書類が必要です。また、車を持ち込む場所も決まっています。

 

 

|要件

 

要件は以下の6点になります。

  1. 食品を加工する車であること。
  2. 加工台、流し台、加工する用具をしまう棚を設置すること。
  3. 照明器具、換気扇を設置すること。
  4. 火気設備の近くには耐火性のある素材を使い、換気扇も近くに設置すること。
  5. 加工台、流し台、棚の近くに、一辺が30㎝の正方形を含む0.5㎡以上の加工作業用の  床面積と、床面から上方1600㎜の高さを確保すること。
  6. 荷物を積むための設備を持っていないこと。キッチン部分の床面積が2分の1を超えること。

 

 

|必要書類

 

また、構造変更検査に必要な書類は以下の10点です。

 

  1. 申請書
  2. 自動車検査証
  3. 自動車検査票
  4. 点検整備記録簿
  5. 自動車損害賠償責任保険(共済)証明書
  6. 使用者の委任状
  7. 所有者の委任状
  8. 手数料納付書
  9. 自動車重量税納付書
  10. 納税証明書

 

 

|場所

 

構造変更検査を受ける場所は、独立行政法人 自動車技術総合機構(NALTEC)の地方の事務所になります。

大阪府には以下の3つの事務所があり、それぞれに管轄が分かれています。

 

 

 

|最後に

 

いかがだったでしょうか?

 

そう簡単に8ナンバーを取得できるわけではないことが分かっていただけたと思います。中でも、黄色の4ナンバーから8ナンバーへの変更はもう一段ハードルが上がります。軽自動車から普通車への変更にもなりますので、車体は軽自動車であっても普通自動車の保安基準をクリアしていなければならないからです。

また、ナンバープレートを軽自動車検査協会に返納してから自動車技術総合機構で構造変更検査を受けるため、その間仮ナンバーを取得するか、車屋さんに依頼して運んでもらう必要があります。

 

自動車:道路運送車両の保安基準(2023年6月5日現在) - 国土交通省 (mlit.go.jp)

 

保安基準は上の表から確認できますが、なかなかに複雑です。

ご自分で判断できない場合は、まず車のナンバーを管轄する独立行政法人 自動車技術総合機構(NALTEC)の地方事務所に相談に行かれることをお勧めします。

 

また、「すでに営業をしてしまっているけれど8ナンバーに変更したい」という方も要件を満たせば8ナンバー登録をすることができます。まずは図面と車検証を持って相談に行ってみましょう。(※8ナンバー登録をすると車検の期限は引き継がれません。)

 

そんな時間も手間もかけられないという方は、請け負ってくれる車の業者さんを探しましょう。良心的な業者さんなら、要件に合うように作り直して、8ナンバー登録までしてくれるかもしれません。キッチンカーを購入した業者さんや、キッチンカーの制作を依頼した業者さんが信頼できるようであれば、そちらに相談してみるのも良いかもしれません。ただ、信頼できる業者さんなら、最初から8ナンバーで引き渡しがされていたはず、と考えることもできます。最初に注意はしてもらっていたけれど、ご自分の都合で構造変更を依頼されなかったのであれば、キッチンカーを購入した業者さんに聞いてみるのが一番速いかと思います。